【固定種の野菜とは】

開業して18年。

【お客様に何をお届けするのか?】

常にそのことをアップデートしながら、その時代に最善の「食」をお届けすることがイーズパッションの使命であると考えています。

 

同じ料理を、変わらぬ味を、ずーっと続ける店も当然ありますが

イーズパッションでは伝統的な料理や変わらないオリジナル料理だけでなく

今までにない新しい調理法や素材の組み合わせなども提案したいと考えています。

 

その中において、決して変わらないものもあります。もっと言うと「譲れないもの」。それは・・・

【固定種の野菜】です。

 

今日はこの「固定種の野菜」とはいったい何なのか?をお話したいと思います。

 

「固定種の野菜」のお話をするためにはそれ以外の野菜の話をする必要があります。「固定種」という言葉は元々ありませんでした。「f1種」の野菜ができたことで、それに対応するために新たにできた言葉です。それ以外の野菜とは「f1」と呼ばれる野菜です。現在、市場で出回っている野菜の99%以上は「f1」野菜です。「固定種の野菜」はほぼ流通されていないと言えます。この投稿を読んでいただき「固定種の野菜」の存在を知り、手に取ってみたいと思っても、どこに行けば買えるのか?どこで生産されているのか?をお伝えすることはかなり難しいのが現状です。ですから、実は「食」に携わる飲食店を経営するものとして、ただ単に料理を提供するだけでなく、「固定種の野菜」の存在を多くの人に知ってもらい、さらには、家庭でいつでも手に入る存在にするところまでがイーズパッションの使命だと考えます。

 

と言うわけで、まずは「f1」野菜についてお話します。

異なる性質を持つ親を掛け合わせると、その子は雑種第一代(first filial generation)と呼ばれます。これを略して「f1」と表します。

昔の農家は育てた野菜のうち、大きな実がなるもの、形が良いもの、味が良いものなどを選抜し自身で種を採って翌年に播種するというプロセスを繰り返してきました。「f1」どころか何世代にもわたってこの作業を繰り返して、その土地に根ざした個性が定着されてきました。これが【固定種】です。固定種は人間もそうですが様々な形や大きさなど個性豊かなものが出来上がります。そのおかげで、気候の変化や病気の蔓延などから絶滅することなく種をつないできました。

さて

「f1」種ですがその特徴は「雑種強勢」にあります。異なる2種を掛け合わせるとその子供(f1)には両親の優性形質だけが現れます。(メンデルの第一法則「優劣の法則」)。甘い品種と病気に強い品種を掛け合わせれば「甘くて病気にも強い」作物が作れるのです。現代の農業において顧客ニーズに添った作物を作ることは必須ですし形や大きさが揃った作物は流通面でも有益です。販売する際にもひとつ100円と効率的に流通できますが形や大きさが不揃いだと量り売りにしたりと手間がかかるわけです。

 

はっきり言いますと「効率的に売れる野菜」が農家さんにとっても生活するためには絶対的に必要なわけです。

それは「見た目がきれいで、形や大きさが揃っていて、甘くて、食べやすい作物」です。この顧客ニーズを満たした売れる野菜を大量に生産し供給するために種苗会社が新しい品種を作り、農家さんがその種を買いスーパーにならぶわけです。

ただし、この「雑種強勢」は1代目にしか現れません。2代目にはバラバラの性質や見た目の作物ができてしまいます。そのため農家さんは採取した種ではなく毎年新しい「f1」の種を買い続けるのです。実際には、種取り自体がかなりの時間と労力を強いられるので農家さんとしても種取りするよりも買った方が楽ではあるようです。

そして、種苗会社では種を大量に効率的に生産するために雄性不稔株を作っています。これが大きな問題だと言われています。雄性不稔株とは遺伝子、ミトコンドリア異常による花粉を作れない株で不妊植物とも言われます。つまり、人工的に子孫を残せない株を作り出し、そこから種を作り販売しているのです。

今、私たちが食べている野菜のほとんどがおしべのない雄性不燃株な訳です。そんな野菜を毎日毎日食べ続けていたら・・・子孫ができない野菜を食べ続けていることで無精子症や精子の数が少ない男性が増えていると言われています。実際に最新の実験ではマウスですが雄性不燃の餌を与え続けたところ無精子になったという結果もでています。

 

これが私たちが普段食べている多くの野菜の実態です。それに気づいている人がどれほどいるでしょうか?さらには固定種野菜を選べている人がどれほどいるのか?

 

では・・・・・

【固定種野菜】とは

もう説明する必要もないでしょう。昔から代々受け継がれてきた種から育った野菜です。本来の野菜です。形も大きさも不揃いですが本来の生命の力に満ちています。香りが豊かで、味が濃くもちろん栄養価も高く人間が今後も選択するべき野菜です。

イーズパッションで提供する野菜は【固定種の野菜】にこだわります。

 

それだけではなく・・・子や孫の代に【固定種野菜】をつなぐために多くの人に知ってもらい選択してもらう世界を作ることが我々の使命であると感じていますし、そのために行動してまいります。

イーズパッションがある埼玉県飯能市。ここには8軒ほどの自然栽培の固定種野菜を育てる農家さんがいます。この数字は全国的に見ると奇跡的に多い数字です。しかし実際に固定種野菜を定期的に手にすることができる市民はほんの一握りです。最大の課題は固定種野菜の生産者の数、新規就農者を増やすこと。そのためには消費者の皆様が固定種の野菜を選択すること。この2点に絞って通常のレストラン営業の合間に世の中に固定種野菜を広める活動を進めていきます。

 

今では飯能、入間の飲食店が集まり「固定種野菜をブランド化するプロジェクト」も動き出しました。先日は固定種野菜の生産者も集まり「意見交換会」も開催されました。少しづつですが盛り上がりつつあります。今後もこの動きを育てて次の世代に何としても【固定種野菜】を繋ぎたいと思っています。皆様の応援をよろしくお願いします。

 

参考資料https://nextwisdom.org/article/1156/

http://nou-ledge.com/2017/08/23/170823_f1/

https://noguchiseed.com/hanashi/f1/f1_1.html

飯能美肌イタリアンレストランイーズパッション オーナーシェフ鈴木栄治